著作一覧【単著】


第一歌集『水は襤褸に』

 

  ●書籍情報●

2002年9月13日発行

四六版上製カバー装136頁 収載歌数337首 別刷栞付 

ながらみ書房 定価 2300円 + 税

 

栞 文 奥村晃作 + 花山多佳子 + 小池 光

装 幀 君嶋真理子

 

第9回日本歌人クラブ新人賞受賞

 

〈自選三十首〉

ペリカンの死を見届ける予感して水禽園にひとり来ていつ

黒柳徹子公式ファンクラブの名をオニオンというはまことか

<中ピ連>をネット検索せしときに「中年ピアノ愛好者連盟」が出る 

天空ゆ鎖が垂れているような五月の界にわれは暮らしぬ

9の字を組み立ててゆくせいねんに銀の幻想共同体を

わが失ししさねよしいさ子のCDに立ち顕れる非在の湿地

冬の陽に照らされている欄干を救いのごとくおもうことあり

青葉闇の時間のなかに入るときメタセコイアの下に鳩、鳩

ナウシカがかつて纏いし衣服さえ思想のなかにはつかよごれて

すぱすぱと花弁落つれば匿名の樹木となりぬ白木蓮も

センサーというものかなしみずからの意に関せずに扉の開く

X軸とY軸交わる埋立地に糠雨のごとく人ら匂えり

綾波レイの髪より青きものありて西1駐車場の青空

おお、朱夏よ 光の槍の穂先にてこの肉体を射抜いてみよ

心情の代弁としてステンレスのマグカップひとつ汗かいており

たそがれる都市のなかにてあきらかに右傾している国家とわれと

カッターで静かに線をひくときに螺旋のかたちの紙は出で来る

方向の定まらぬままの一生(ひとよ)でも蛇腹に日々はつがっている

残照がしずかに消えるこの街に熱保ちたる壁という壁

精神科病棟端のシャッターが開いて真白きライトバン出づ

取り交わす言葉はかくも薄くなりわが手に戻るテレホンカード

ほとばしる水のちからに耐えかねてシャワーのノズルはのたうちまわる

雨に濡れ溶けかけているぬばたまの新聞写真のなかの柳美里

文弱の弱とは何ぞ 雑炊の底につぶれた飯粒沈む

ああやはり紙も繊維だ 定規もて破りし後に産毛の戦ぐ

仄暗き部屋でコピーを取るときにかの日の父の背中の光

真夜中の駅を列車は通過して十数秒の帯状の昼

だぶだぶの服着てしまえばいくつだかわからなくなる女がひとり

チョークもてハーケンクロイツ床に書く つぎつぎ数は増えてゆきたり

撤収の指示を出したる指先は軍手嵌めてもまだ貴族的 


第二歌集『関係について』

 

  ●書籍情報●

2012年6月30日発行

四六版上製カバー装 200頁 収載歌数 411首

北冬舎 定価 2200円 + 税

 

装 幀 大原信泉

 

 

〈物語〉の失効後の世界を生きるために、〈主体のありか〉と〈私性の根拠〉を〈関係性〉の観点からひたすらに問う、進境あざやかな十年の足跡四一一首を収める第二歌集(広告文より)

 


第三歌集『空間』

[ポエジー21]シリーズ 第Ⅱ期4

 

  ●書籍情報●

2019年6月30日発行

四六版並製カバー装 134頁 収載歌数 356首 別刷付録付

北冬舎 定価 1400円 + 税

 

栞 文 西村美佐子+斉藤斎藤 

装 幀 大原信泉

 

 第51回埼玉文芸賞短歌部門準賞受賞

 第16回日本詩歌句評論随筆大賞短歌部門大賞受賞

 

〈皮相な現実/異和な日常〉に身を委ねて〈主体のありか/私性の根拠〉を探った歌集『関係について』を継ぐ思索が独自の〈空間感覚/現実空間〉を現出する!(帯文より)

 

〈自選三十首〉

いまさらに祠のような心地もて工場日記を拾い読みせり
現実に揉まれるばかりの肉体で夜中にまたも足裏のつる
穴あけのパンチャーをもてあけし穴の切断面のげにうつくしき
水滴のあまた残れる浴室のなまなましさを同居と呼びぬ
精神の下方修正 蕎麦がないので温かい冷麦たべる
生きるすなわち慶祝となる世となれば無事の知らせがつぎつぎ届く
灰色のペンキで○を描いたらひろがる精神世界、ようこそ
残金をやたら気にする生活は木馬で荒野を旅するごとし
人間のいのちの匂いしていたりナトリウムランプに照らされる歩道
伊豆の野を越えて峠をなお越えてバスは石油で動かす脚絆
言葉が先かこころが先か分からぬに卵を黄身と白身に分ける
夜の頭上を自衛隊機の進みたり 暗渠のなかにも銀河はあらむ
酒呑めば記憶はおちて春の雨、誰も鬼籍よりは戻れず
大暑から処暑へのさなか雨降れば洗い晒しの地はすぐ乾く
枝肉がつぎつぎ海に捨てられる夢をみており戦後のその後
髪を豊富に有する妻は土曜日の午後に縮毛矯正に行く
えぐられた石灰あらわに晒しつつ神奈備として武甲山立つ
あらためて他者だとおもう、きんつばを呑みこむように食べている妻
風流夢譚事件ふたたび起こり得る世なりオリーブオイル買い足す
灯油売りの過れるときに椅子の背に掛けしスカートまた滑り落つ
冬旱のなか思うなりまだ誰も踏破をせざるガンカー・プンスム
サイダーの壜とり落としたりビールかけはおそらくせずに死ぬだろうわれ
鼻かめば血のかたまりの混じりおり テレビにはヒラリーとトランプ
CMをひとつ見終えてさて何の広告だったか思い出せざり
左からのみ鼻汁は垂れはじめ、しだいに時空が歪む気配す
松脂のにおいが雨とともにして、またも人間関係にしくじる
冷蔵庫にバナナは黒く熟しおり甲高き午後にサイレンは鳴る
もとどりを切ってざんばらになるように雨降るなつの夕暮れである
B4の紙をひっくりかえすときなまめくごとき空間時間
履く靴を買い替えるとき楽しかりけりそれが安全靴であっても

【書評などの反応】(括弧内は執筆者)

2019年7月28日付朝日新聞歌壇俳壇「風信」欄

2019年7月28日付東京新聞短歌俳句「歌の本」欄

2019年8月12日付毎日新聞短歌俳句「新刊」欄(中川佐和子)

2019年8月20日付河北新報「うたの泉」欄(梅内美華子)

2019年9月4日付北日本新聞「とやま文芸散歩」欄(黒瀬珂瀾)

「短歌研究」2019年11月号「最近刊歌集・歌書評・共選」欄(和嶋勝利)

「本の雑誌」2019年11月号「行間の広い本棚」欄(石川美南)

「短歌人」2019年11月号「批評と紹介」欄(松村由利子・山田航・山本まとも)

「現代短歌新聞」2019年11月号書評欄(三井 修)

「未来」2019年11月号「今月の歌」欄(盛田志保子)

「短歌往来」2019年12月号書評欄(大井 学)

「短歌」(KADOKAWA)2019年12月号書評欄(嵯峨直樹)

「うた新聞」12月号書評欄(遠藤由季)

「長風」2019年12月号「歌壇の歌集・歌書を読む」欄(松本和代)

「ねむらない樹」第4号(2020年2月刊)書評欄(鈴木晴香)

「群像」2020年4月号連載「現代短歌ノート」(穂村 弘)

「埼玉歌人」第101号(2020年4月刊)書評欄(藤島秀憲)

「覇王樹」2020年4月号「受贈歌集紹介」欄(渡邊富紀子)

2020年7月8日付河北新報「うたの泉」欄(本田一弘)

「まひる野」2020年9月号特集「歌壇の〈今〉を読む」(後藤由紀恵)